2012年8月30日木曜日

8月29日。

「忘れるまいぞ。 羽越の大災害を。」
「昭和四十二年の八月二十九日の 真っ暗闇の夜明け前だった。」

これは、合唱組曲「阿賀野川」第三曲「羽越大災害」の詩の一部です。
8月29日は、羽越水害(8.28水害)によって、旧三川村で亡くなった方々の命日なのです。
阿賀町にある羽越水害慰霊碑に、黙祷を捧げました。



この8月29日の想いを、リーダー ミナガワトオルが自身のブログでも綴っております。
【ミナガワトオルの徒然日記 「8月29日」】

そして、今日の公式ブログでは、
「羽越大災害」の詩を掲載いたします。
【インタビュー「阿賀野川」を語る】の関連記事ともあわせてご覧下さい。



「羽越大災害」 詩:山本 和夫

雨が降り続く。
暗闇に。
――山々は轟いた。
天を、
ひっくり返し、雨は降り続く。
阿賀野川は吠え。
阿賀野川に注ぐ谿川はわめき、
山々から雷鳴がとどろき、火花が飛び散った。
消防団長が
火の見やぐらに、かけ上がった。
けたたましく、半鐘は鳴り響き。
――宇宙は、大戦争だッ。


忘れるまいぞ。
羽越の大災害を。
昭和四十二年の八月二十九日の
真っ暗闇の夜明け前だった。
四百ミリを超す集中豪雨だった。
村中に、魑魅魍魎が、荒れ狂った。
――けたたましい半鐘の音に、
村を守りつづけた村はずれの野仏は
声なく水底に転がり失せた。


山々の
慟哭の中で、
父は母を、母は子を呼びつづけた。
子は水底から、母を、父を呼びつづけた。
ひとりぼっちの老婆の住む
崖の上の離れから、
――南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
念仏が濁流に流れていった。
けたたましく半鐘は鳴り響く。
子どもが叫んだ。
――あっ、学校が消えたッ。


ああ、人間は小さい。
悲劇の舞台に立った時、
人間は小さい。ちいさい。
舞台は、真っ暗闇だった。
人々の心も、真っ暗闇だった。